低圧水銀ランプとは?特徴や他光源との比較、表面改質への応用についてご紹介!
低圧水銀ランプとは
低圧水銀ランプとは、その名の通り、点灯中の水銀蒸気圧を100Pa以下の低圧(通常1〜10Pa)に保ち、水銀蒸気中のアーク放電を利用して紫外線を発生させる光源です。
石英ガラスでできた管の中には、一対の電極とともに、ごく少量の水銀やアルゴンといった不活性ガスが封入されています。
高電圧で放電を起こすと、飛び出した電子が水銀原子にぶつかり、原子はエネルギーの高い「励起状態」になります。この状態から安定した状態に戻る瞬間に、決まった波長の紫外線が生まれるのです。
低圧水銀ランプは、主として185nmと254nm(水銀の共鳴線)の紫外線を放射します。この特性を活かし、殺菌や表面改質を目的に使用されます。
低圧水銀ランプの特徴
低圧水銀ランプの主な特徴は以下の通りです。
■ 2つの主波長を効率的に放射できる
低圧水銀ランプは、投入されたエネルギーを主に2つの波長の紫外線へ効率的に変換します。それぞれが実用的な役割を持つ以下の2つの波長を同時に放射します。
◇254nmの光
この波長は細菌やウイルスのDNAを破壊する能力が非常に高く、空気や水の殺菌、物体の表面殺菌などに効果を発揮します。
◇185nmの光
こちらはさらにエネルギーが高く、空気中の酸素(O₂)に作用して強力な酸化力を持つオゾン(O₃)を生成します。このオゾンを利用して、有機物の分解や洗浄、表面改質などが行われます。
一台でこれら2波長を同時に利用できるため、殺菌と酸化分解を組み合わせた強力な処理が可能です。
■ 形状と材質を用途に合わせて選べる
ランプは、用途や搭載する機器の設計に合わせて、物理的な形状だけでなく、放射する紫外線の種類を決めるガラス材質も最適化できます。
形状の選択
設置スペース、必要な光量、照射対象などに合わせて、多岐にわたる形状が提供されています。
◇直管型(ストレート型) 最も標準的な形状です。
◇U字型・らせん型 省スペースで長い発光長を確保し、高出力を実現します。
◇面状光源 広い面積に対して均一な光を照射したい場合に適しています。
ガラス材質の選択
ランプの管に使われる石英ガラスの種類によって、放射する紫外線をコントロールします。
◇合成石英ガラス(オゾンランプ)
185nmと254nmの両方を透過させます。オゾンを積極的に利用したい場合(洗浄、表面改質など)に最適です。
◇オゾンレス石英ガラス(殺菌ランプ)
185nmの紫外線をカットし、254nmの紫外線だけを透過。オゾンの発生が望ましくない、純粋な殺菌用途で使われます。
低圧水銀ランプと他の主要な紫外線光源との比較
低圧水銀ランプには、他の紫外線光源とは異なる特徴があります。ここでは代表的な3つの光源との違いを簡単に見てみましょう。
■ 超高圧水銀ランプとの違い
超高圧水銀ランプは、低圧水銀ランプとは対照的に、数十気圧以上の高圧状態で動作します。放つ光も185/254nmではなく、i線(365nm)などの強い輝線スペクトルが中心です。そのため、用途も殺菌や表面改質とは異なり、その高輝度を活かした半導体露光装置やプロジェクターが主となります。
■ UV-LEDとの違い
UV-LEDは、放電を利用するランプと根本的に異なり、半導体で発光します。
そのため、水銀フリーで小型・長寿命という大きな利点があり、ON/OFFの応答性や出力調整といったランプにはない優れた制御性も持ち合わせています。
■ エキシマランプとの違い
エキシマランプは、172nmなど、よりエネルギーの高い特定の真空紫外線を高効率で放射できるのが特徴です。低圧水銀ランプと同様に表面改質や洗浄に用いられますが、より強力な処理が可能です。
ただし、低圧水銀ランプと比較すると、導入・運用コストは高くなる傾向があります。
低圧水銀ランプでのUV洗浄・表面改質
低圧水銀ランプを用いたUV洗浄・表面改質は、ランプが放つ2種類の紫外線を利用して、素材表面を綺麗にしたり、特性を変化させたりする技術です。
UV表面改質の光源にはエキシマランプなどもありますが、低圧水銀ランプはコストと性能のバランスに優れた、効果的な選択肢です。
■2つの波長の相乗効果
①有機物の分解
254nmの紫外線は、素材表面に付着した有機汚染物(皮脂や油分など)の分子の結合を直接切断する高いエネルギーを持っています。
②オゾンの生成
一方、185nmの紫外線は、空気中の酸素を分解し、強力な酸化力を持つ活性酸素やオゾンを生成します。
この2つの作用により、「①で有機物の結合を切り離し、②で生成したオゾンがそれを酸化分解して除去する」という効率的なプロセスが生まれます。
分解された有機物は二酸化炭素や水となって気化するため、溶剤などを使わない環境に優しいドライ洗浄が可能です。
■主な効果と利点
この原理により、以下のような効果や利点が生まれます。
◇有機汚染物の除去(UV洗浄)
ガラスや金属、プラスチック表面の微細な有機物汚れを除去し、表面を綺麗な状態にします。
◇密着性の向上(表面改質)
表面を親水化(水に馴染みやすく)させることで、インクや塗料、接着剤の「濡れ性」を改善し、剥がれにくくします。塗装・印刷・コーティング・接着などの前処理工程で品質向上に貢献します。
◇コストと設計の自由度 (エキシマランプ比較)
ランプや装置が比較的安価です。また、対象物からある程度の距離(数cm)を離して照射できるため、装置の設計がしやすいという利点もあります。
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